レストランで長年、締めくくりのデザートやプティフールを手掛けてきた私にとって、
料理人と同じく素材への追及は常にモノづくりの出発点でした。
これまでチョコレートを扱う機会は少なからずありましたが、実際にカカオの産地に赴き、
栽培や生産過程を知る機会を得たのは2019年のコロンビア訪問が初めてでした。
私がその際に感じた衝撃は今もなお表現の原動力になっています。
アトリエうかいは、皆様がご存じのようにチョコレート専門店ではありません。
しかし、フールセックにテロワールあるカカオを組み合わせることで
より豊かなアトリエうかいならではのお菓子の表現を皆様へお届けしたいとずっと思い続けてきました。
カカオとのマリアージュが私のテーマであり、自家製のコンフィズリーやジャンドゥージャ等の
副素材の組み合わせとともに、カカオの産地について想いをはせていただくことで
より一層お楽しみいただけたら幸いです。
アンデス山麓の丘陵が、カカオ栽培に最適な環境をもたらすコロンビア。今回は同国産カカオバターから作られた当店特製ホワイトチョコレートを素材として用いています。一般にカカオバターは脱臭処理等を施したものが多く使われていますが、当店では良質なコロンビアカカオの風味をそのまま活かしたナチュラルなカカオバターを使用しています。
アフリカ大陸の南東に位置する島国。この地で育まれたカカオの中から、今回はベリー系の赤いフルーツのような酸味やシトラス系の爽やかな香りを持つものを選びました。果実との相性が抜群なことから、自家製ジャムやパート・ド・フリュイ、フルーツを用いたジャンドゥージャ等と掛け合わせています。
南米の太平洋に接し、国の中央にアンデス山脈が横たわるペルー。国土の60%が熱帯林で覆われていることからカカオ生産に理想的な土地とされ、さまざまなカカオの原種や野生の交配種が数多く存在しています。今回は力強い味わいとナッツを思わせるフレーバー、シナモンのような香りを持つカカオを取り入れています。
2,500年前、メキシコでマヤ文化の祖先がカカオ栽培を初めて行ったと言われており、アステカ皇帝やスペイン王族のために提供されたことから「カカオレアル(王家のカカオ)」とも呼ばれています。当店ではカカオそのもののフローラルな風味を感じていただきたく、自家焙煎したカカオ豆を糖衣がけしてチョコレートコーティングしています。
ベネズエラの北の沿岸に位置する小さな村・チュアオ村のカカオ。その名を聞いたことがある方は多いのではないでしょうか。450 年以上にわたり素晴らしいカカオを生産する地域として名声を得てきました。クッキーに練り込んで焼き上げたり、キャラメルに混ぜ込んだりして使用していますが、その力強いフレーバーはしっかりと存在感を醸しています。