感謝を込めて、
うかい竹亭から皆様へ

日頃より「うかい竹亭」をご利用いただき、
誠にありがとうございます。
長らくご愛顧いただきました当店は、
2024年11月30日をもちまして
閉店する運びとなりました。
 
これまで支えてくださった、すべての方々へ。
創業49年を数える当店の歩みを振り返るとともに、
皆様へお伝えしたい想いをここに綴ります。
 
 

うかい竹亭の足跡
 
 

1975年11月。
うかい創業者は、かつて千利休が大成した
茶の湯の“侘び” の精神を宿した
「うかい竹亭」を奥高尾の竹林に
開店いたしました。
 
 
華やかさとは対極にある、素朴な美しさ。
 
庶民的な温もりと賑わいを演出する
うかい創業店「うかい鳥山」に対して、
当店では、静謐な空間のなかに
季節折々の繊細な味わいを見出す店づくりを
志してまいりました。
 
竹林を抜ける風が運ぶ、清流の水音。
石畳の小径に咲く、可憐な野花。
背景には、高尾山のたおやかな山容。
 
敷地内に歩みを進めるほどに、
優美でありながらも
凛とした空気に包み込まれるような感覚を
大切にしてきました。
料理においては、開店当初は
飛騨地方に古くから伝わる
格式高い日本料理を提供しておりましたが、
徐々に京風や高山料理などを取り入れた
“うかいスタイル”の懐石料理へと
進化を遂げていくことに。
 
その中で、“鮎物語”と形容される
季節ごとの鮎の一品や、
高山の名物である朴葉味噌に
牛肉を乗せた「朴葉焼き」など、
さまざまな名物も生まれました。
 
清新さを愉しむ、出始めの「はしり」。
持ち味が最高潮に高まる「旬」。
過ぎゆく季節を惜しみながら味わう「名残り」。
 
素材と料理人の対話から生まれる自然な味わいを、
四季を通してお客様へお届けしてきました。
「建物自体がおもてなしになる」という考えのもと、
49年ものあいだ非日常感に満ちた佇まいを
守り続けてきたうかい竹亭の空間。
 
敷地内に点在する大小16の離れに、
曹洞宗の総本山である
福井の「永平寺宿坊」に見立てた大広間。
 
利休作の茶室である国宝「待庵」を写し、
訪れる人のその時々の気持ちに応じて
“む”=「夢」「無」「霧」など、
いかようにも変容するようにと名付けられた
「茶室 む庵」。
 
茶の湯の一期一会の精神が込められた、
カウンター席の特別室「方丈の間」。
 
ひとつひとつの建物から室礼にいたるまで
はかない“侘び”の精神を
幾重にもめぐらせた世界を構築してきました。

山間の厳しい自然環境において、
いくつもの災害を乗り越えてきたその建物にも
いつからか少しずつ、ほころびが生まれてきました。
 
時が移ろい、老朽化が進むなかで
数年におよぶ熟考をかさねた結果、
断腸の思いではありますが
このたび暖簾を下ろす決断をいたしました。

当店の特別室・方丈の間に掲げられている
“美味方丈”の額。
 
この言葉には
「凝縮された美味を深く感じる一丈四方の空間で、
食材を育んだ土壌や気候、
作り手の愛情に想いをめぐらせ、
幸福な時間を過ごす」
という意味が込められています。
 
美味方丈の精神は、うかいグループの
「kappou ukai」にも引き継がれており、
今後も守り続けていく所存です。
 
国内外のkappou ukai各店ともに、
これまでうかい竹亭を愛していただいたお客様に
「今もうかい竹亭は、ここに生きている」と
感じていただけるよう、精一杯精進してまいります。
 
そして、人の心を豊かにするおもてなしを
体現し続ける「うかい」の精神は、
この先も変わることなく在り続けます。

これまでの永きに渡るご愛顧に、
心より感謝申し上げます。
 
何度も足を運んでいただいたお客様や、
遠方よりお越しくださったお客様、
大切な日に当店を選んでくださったお客様。
開店から今まで
深遠なる歴史を築いてこられましたのも、
当店を育ててくださったすべてのお客様のお陰です。
 
うかい竹亭スタッフ一同、
これまでの感謝の気持ちを込めて。
心からの感動の時間を味わっていただけるよう
営業最終日まで精一杯努めてまいりますので、
ぜひご来店いただけますと幸いです。
 
皆様とのお別れまであと僅かの月日となりますが、
何卒お引き立ての程よろしくお願い申し上げます。
 
 

スタッフ一同

うかい竹亭―懐石料理―

〒193-0846 東京都八王子市南浅川町2850
TEL 042-661-8419
営業時間

平日 11:30~21:30(19:00 L.O.)|
土・日・祝 11:00~21:00(19:00 L.O.)