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7. つくる責任・つかう責任
―前回のあらすじ―
大丸東京店POP UP SHOPでアトリエうかい×L’ABEILLEコラボレーション商品の販売がスタート。
今回はその販売に先駆けて行われた、”高尾山麓のはちみつ”にまつわる特別セミナーの様子をお伝えいたします。
おかげさまで、
コラボレーション商品が
完売しました!
爽やかな気候と共に、高尾山麓が紅葉で彩られた昨年11月。
大丸東京店の催事やアトリエうかい直営各店舗での「アトリエうかい×L’ABEILLE」コラボレーション商品の販売が終了しました。
大丸東京店の会場では、シェフパティシエの山本・内藤が自らの採蜜体験をもとにお菓子に込めた想いをお客様へ伝えるシーンも。いつもは各店の工房でお菓子作りをしていることもあり、お客様との会話にも一層熱が入っていました。期間中はたくさんの方々にご来店いただき、誠にありがとうございました。
つかうからには、
責任を持って伝える。
コラボレーション商品の販売からさかのぼること2か月前。
蝉しぐれが響き、まだまだ暑さも残る昨年9月のことです。
うかいグループの創業店であるいろり炭火焼料理店「うかい鳥山」に、熱弁を振るうグランシェフパティシエ・鈴木滋夫の姿がありました。
この日鈴木はL’ABEILLE養蜂部の加藤弦さんと共に、うかい鳥山にて『高尾山麓のはちみつをつかったお菓子で知る人と自然の共生』と題したセミナーを開催していました。
このセミナーは、アトリエうかいのスタッフが自らの養蜂場見学や採蜜体験で得た
「自然と共に生き、自然からいただくこと」の尊さを一人でも多くの人に届けたいという願いから実現したものです。
会場に選んだのは、”世界文化遺産”の越中五箇山から移築してきた「うかい鳥山」を象徴する合掌造りの建造物。通称、「前合掌(まえがっしょう)」と呼ばれる建物です。茅葺屋根や太い柱、梁で造られた昔ながらの日本家屋は、いつもは団体のお客様をご案内する食事の場として、または結婚式の披露宴を執り行う寿ぎの空間として利用されています。また、うかいグループの入社式や決起集会など会社として節目のイベントの際にも使われる、従業員にとっても特別な場所でもあります。
高尾を知り、学び、味わう
“高尾尽くし”の一日。
リスナーとしてご招待したのは、八王子近隣の学校に通われる学生さんたち。
ゲストスピーカーには高尾山頂にある東京都の自然公園施設「高尾ビジターセンター」のインタープリター(解説員)を務める梅田由花さんをお招きし、4つの立場から”高尾を知る”トークショーを行いました。
1.高尾山麓で「はちみつをつくる人」=
L’ABEILLE 加藤 弦さん
2.高尾山麓のはちみつをつかって「お菓子をつくる人」=アトリエうかい 鈴木 滋夫
3.高尾山麓のはちみつをつかった「お菓子を食べる人」=学生さんたち
4.高尾山頂で「自然を守り伝える人」=高尾ビジターセンター 梅田 由花さん
高尾山麓のレストランで高尾山に関わる人々が集い、身近な自然を想いながらはちみつを味わう。そしてこれからの自然環境について考える、高尾尽くしの一日。
今回のコラムではその前半の模様をお伝えいたします。
身近な高尾山は、”奇跡の山”。
「高尾山は、奇跡の山なんです」
そう話してくださったのは、毎日30~40分かけて高尾山に登り、山頂の「高尾ビジターセンター」にて勤務されているインタープリターの梅田さん。
山頂にあるセンター窓口で登山コースの案内を行い、展示物の解説や自然講座を開催する高尾山のエキスパートであり、高尾山頂で<自然を守り伝える人>です。
「自然は、守っているだけではその土地の本当の良さが伝わりません。一方で、食を通して伝わることは色々とあります。大事なのは”利用”と”保護”、両者のバランスです。このイベントを通して、なお高尾の自然を守っていただく機会となれば嬉しいです」
イベント前に行った事前アンケートで、多くの学生さんたちから寄せられた”高尾山と言えば自然“というコメント。それを受けて、梅田さんからのお話を通じて”高尾山の本当の姿”を3つのテーマで深めていただきました。
1.生きものの宝庫
哺乳類、32種。
鳥類、約130種。
昆虫、約5000種。
植物、約1600種。
これは、高尾山に生息する動植物たちの種の数です。
実に豊かな生態系を誇り、たくさんの生き物が生息しています。
特に植物はイギリス全土で自生する種類の数に匹敵するほど。
原生林が広がる自然豊かな鹿児島県の屋久島と比べてみても、面積こそ異なりますが、
植物数はそれほど変わりません。
このデータを見ると、高尾山は実はとてもポテンシャルの高い山だということが分かります。
また、高尾山には自生する植物の種類も豊富で、高尾山で初めて発見・命名された植物も多くあります。
めずらしい草花たちの四季折々の姿を楽しむことができるのが、この山の醍醐味でもあります。
ではなぜ、こんなにも植物が多いのでしょうか。
2.ふたつの気候帯
高尾山は暖温帯と冷温帯のちょうど境目に位置する珍しい場所。
それぞれに生える植物が山の南北に分かれて存在しています。
たとえば暖温帯には比較的暖かい環境で育つ「常緑広葉樹」が、冷温帯には寒く厳しい環境にも適応した「落葉広葉樹」が育ち、山中にある暖温帯と冷温帯の境界エリアに立つとその違いがはっきりと見て取れます。
3.残された天然林
高尾山は天平16年(744年)、高尾山は東大寺の大仏造立で有名な「行基」によって開山されました。
それから時を経て、戦国時代。高尾山は北条氏の治める領土となります。北条氏の定めた厳格な「竹林伐採禁止の法」により、高尾の自然は守られてきました。その後北条氏は豊臣秀吉に敗れ、やがてこの地域は徳川家康の支配下となります。一方で高尾山の保護は引き続き踏襲され、その豊かな自然は手つかずのまま残されることに。江戸時代に入ると、幕府により高尾山の森林の保護や植林も積極的に行われるようになります。
高尾山の山腹に位置する関東三大本山のひとつ「高尾山薬王院有喜寺」の境内には、”殺生禁断”と文字が刻まれた碑が建てられています。さまざまな時代を経た今も、薬王院を中心に、樹齢700年を超える大杉並木をはじめ古くからの自然植生が残されているのです。
考えて、そして、味わって。
梅田さんから”高尾山の本当の姿”をテーマにお話いただいた後は、
高尾山麓で<はちみつをつくる人>、L’ABEILLE 加藤さんの出番です。
人類がこの地球で暮らし続けていくために、2030年までに何をすればいいのか。
その道しるべとなる17の目標を立てたSDGs(持続可能な開発目標)。
“誰も置き去りにしない、より良い世界”をつくるために、誰もが向き合っていきたい指標です。
「そのなかで、養蜂はSDGsの4項目を達成しており、地球環境の保全に大きく寄与しています。
実は、食物となる植物の7割がハチの受粉によってまかなわれているのです。ハチが居なくなると数年で飢餓が訪れると言われるほど、ハチは人間の食生活にとって重要な存在です。
CO2の削減が叫ばれる昨今、ハチの受粉を介して植物が増え、結果として植物の光合成によって酸素を増やしているのも地球環境における養蜂の大きな利点と言えるでしょう。」
加藤さんのお話と共に<お菓子を食べる人>である学生さんたちの前に並べられたのは、同じ高尾山麓の養蜂場で採れた季節違いのはちみつ。
色も違えば、香りも違う。
とても同じ場所で採れたとは思えない個体差に、おのずと味わいへの期待が膨らみます。
「左が春のはちみつ。蜜源は桜の花が多く割合を占めています。華やかな香りで優しい味わいです。」
加藤さんの説明に合わせて、ひとつずつ試食が始まります。
真ん中は初夏のはちみつで、アカシアの花が蜜源の中心。右は夏のはちみつ。栗の花の割合が多く、色も濃いのが特徴的。
「香りが印象的で、味も全然違う。いつも高尾山の花畑を見ているので、情景が浮かびます」と話すのは、学生さんたちと一緒にはちみつの試食をした梅田さん。
「どの味わいがお好みでしたか?」
3種類の試食を終えて学生さんたちに質問をしたところ、春・初夏・夏の味わいそれぞれに「美味しい!」と感じてくださる方がいました。はちみつの味も違えば、好みも人それぞれです。
次回は、セミナー後半の様子をお届け。
そして、高尾山麓のはちみつを巡る
新たな取り組みのお話も…?
2023年もアトリエうかい×L’ABEILLEプロジェクトはまだまだ続きます。お楽しみに!
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