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CORPORATE RELEASE
MESSAGE
株主・投資家の皆様におかれましては、平素より格別のご高配を賜り、厚くお礼申し上げます。
2024年3月期は、外食やインバウンドの需要回復を背景に人流の回復が一段と進む一方、慢性的な人手不足に加え、資源の高騰や物価上昇など厳しい事業環境のなかにありましたが、売上高・利益とも期初計画を上回った着地となりました。これも、従業員一人一人が常に最上のおもてなしを目指し、真摯に業務に取り組んだ結果だと、経営者としてその頑張りに心より感謝しています。
当期は、「お客様一組一組、一人一人に対してスタッフと時間を集中させることでこれまで以上の上質な料理ときめ細やかなサービスをご提供する」という方針のもと、週休2日制の店舗を大幅に拡充するとともに、コース構成、価格の見直しを実施しました。これらの結果、お客様お一人あたりの単価は上昇し、来客数も想定よりも順調に推移したことが好業績につながったと考えています。
また株主様への利益還元につきましては、2024年12月に創業60周年を迎えることから、日頃のご支援に対し感謝の意を表し、ご厚誼にお応えしたいと考え1株当たり2円を記念配当として実施させていただくことといたしました。これにより当期の1株当たり期末配当は15円の普通配当に記念配当を加えた合計17円となります。
中期経営戦略の進捗
重要課題に取り組み、新たなステージに向けた事業基盤を構築
当社は将来にわたる継続的・安定的な成長のために、中長期経営方針において2023年3月期からの3年間を事業基盤の構築期(1st Stage)と定め、「人材力の強化」「収益基盤の強化」「財務基盤の強化」を重要課題として各種施策に取り組んでいます。
◆全社一丸となって従業員の成長を促す育成体制を構築
「人材力の強化」は、人によるおもてなしを一番の強みとする当社にとって永遠の課題ですが、特に人材育成については成長戦略における最大の柱と認識しており、社長就任以来、精力的に見直し・改善に取り組んでいます。
具体的には、これまで各店舗が独自に行っていた育成のあり方を見直し、和食・洋食・物販・文化の業態をまたいだ全社的な研修会・勉強会、他店舗の研修に参加できる他店舗研修制度を導入するなど、「全社で社員を育成し、社員の成長を促す」ための体制構築を進めています。
これら人材育成における変革は、店舗・業態ごとに分業していた組織の垣根をなくすことにもつながっており、レストラン事業部と文化事業部が連携して箱根ガラスの森美術館併設のカフェで新メニューを提供するなど組織横断的な展開も進んでおります。風通しも良く、従業員一人一人がチームメンバーとして自律的に動ける組織になってきたと実感しています。
◆社員一人一人がビジョンを描ける評価制度を再構築
評価制度については、管理職を視野に入れる総合職ルートに加え、専門性を極めたい人のために専門職のルートを新たに設ける複線型人事制度の導入を検討しています。
また、職位の役割の明確化も進めます。現状では各職階への昇格基準が複雑化しており、昇格により求められる責任が明確になることで公平で納得感ある評価につなげたいと考えています。
◆週休2日制導入でお客様満足と従業員のQOLを両立
2022年に『銀座 kappou ukai 肉匠』に初めて週休2日制を導入し、売上・利益の確保など成果を確認できたことから順次対象店舗を拡大してきました。2024年7月からは都心店も隔週で週休2日とする予定で、これにより多くの店舗が週休2日となります。
週休2日制を導入した店舗では、営業日には全スタッフが揃うので万全の体制で営業が行えるうえ、スタッフは目の前のお客様に集中しておもてなしができるようになりました。また、若手にとっては中身の濃い業務内容により早期上達の機会にもなっています。
◆新業態『UKAI GOURMET DELI』で物販事業を拡大
物販の新業態として成長促進を図る『UKAI GOURMET DELI』ですが、2023年6月のオープンから順調に推移しており、今後はクリスマス、結婚記念日、誕生日など特別な日にレストランに行けなくても家庭で楽しむことができる─そんなセットメニューの開発を進め、お客様に喜んでいただける魅力的な提案を展開することで事業成長を目指します。
◆「アトリエうかい」新工房建設計画は着実に進捗
物販の主力である製菓については、前期までの出店による売上拡大が一段落し、当期から催事出店・卸販売・EC販売の強化により安定収益確保を図る段階に入っています。
既存の八王子工房のキャパシティが最大に近づいているため新工房の建設計画を進めており、こちらについては進展があり次第改めて詳細をご報告させていただきたいと考えています。
2025年以降を見据えた取り組み
リスクを受け入れ果敢にチャレンジすることで一層の成長を実現
中期計画1st Stage 終了後、2025年以降の持続的成長を実現するために、中長期を見据えた新しい取り組みも始めています。
コロナ禍を機に事業環境が急速に変化しているなか、経営者としては従来の経験則、事業展開を通じ蓄積してきた独自の経営資源だけで中長期にわたり成長を続けることは難しいと感じています。
今後、労働人口が減り続けるのは明らかとなっているなかで、一定人数のスタッフが必要となる既存業態の新規出店は極めて困難でしょう。「空間×料理×おもてなし」といううかいの世界観は絶対に変えてはいけないものですが、変えてはいけないものを守り続けるためにも、これまでの常識に囚われず、未知の領域にもリスクをとってチャレンジしていかなければなりません。
創業者である鵜飼貞男は、周囲が反対するなかで「とうふ屋うかい」の開業に踏み切るなど、常にチャレンジの人でした。企業が永続するためには「守り」だけではなく、どこかで変化を促す「攻め」も必要です。創業者の想いを受け継ぐ私たちにとって、今がその時なのかもしれません。
◆ポップアップストアで新業態開発の可能性を模索
一つのチャレンジとして、2024年4月には麻布台ヒルズマーケットで1週間限定の「とうふ屋うかい」ポップアップストアを開催し、カウンター6席のイートインスペースで冷凍・真空パック化も可能なメニューを提供しました。
物販事業での展開とともに、例えば「とうふ屋うかい」に併設する形で定食に寄せたショートコースとして提供するなど、これまでとは一味違う新業態の可能性も視野に入れています。
◆社外との連携・協働によりイノベーションを創出
これまでにない新しい発想を生み出すには、社内に限らず、同業種、他業種との連携が有効との考えから、様々なコラボ企画にも挑戦しています。
特に創業60周年となる2024年は、『表参道うかい亭』で鉄板料理とお寿司のイベントを開催したのを皮切りに、韓国で昨年に続き日本料理「TAMAYURA(玉響)」とガラディナーを開催するなど、様々なレストランとの協働を予定しており、これらの取り組みを通じて現場に社外人材との交流が生まれることで、個人の成長、新しい価値の創出につながることを期待しています。
サステナビリティの取り組み
パーパスを広く発信することによりステークホルダーとの信頼関係を構築
当社の企業理念は創業から間もない1967年、うかいで働く従業員のための心の支え、道しるべとして策定されました。
「100年続く店づくりのために、当社にかかわるすべての人々を大切にし、すべての人々により大切にされる企業になることを目指す」と謳ったものですが、この考え方は、今日社会的に関心が高まっているサステナビリティそのものだと感じています。
当社は、企業理念に基づき創業当時からサステナビリティに沿った経営を続けてきましたし、今後もこの根幹部分が変わることはありません。しかし今日、企業に対して環境・社会の持続可能性に配慮した事業活動を求める機運が高まるなかで、当社としてもこれら社会的要請に応じてサステナビリティの取り組みを一層強化し、成長戦略との両立を図っていく必要があると認識しています。
このため、改めて企業理念に基づき当社としての社会的役割・責任・存在意義を確認し、達成すべき使命や理想とする組織像、価値観をパーパス、MVV(ミッション、ビジョン、バリュー)として策定しました。この内容を広く世の中に発信することでステークホルダーの皆様との信頼関係を築き、同じ志を持つ人々との共創・協働を一層進め、様々なサステナビリティの取り組みを前に進めていきたいと考えています。
さらに2023年6月、取締役社長を委員長とするサステナビリティ委員会を立ち上げ、戦略的にサステナビリティを推進する体制を構築し、同時に当社が取り組むべき5つのマテリアリティ(重要課題)を特定しました。今後は事業を通じて実効性ある取り組みを展開し、マテリアリティの解決を目指します。
株主・投資家の皆様へ
2025年3月期は、3年間の中期計画1st Stageの総まとめであり、次につながる重要な1年という位置づけで、3つの重要課題を着実に進めていくとともに、次の2nd Stage(2025年4月~)からスタートする成長戦略を策定することになります。
成長戦略について現時点で明確なことはお話しできませんが、2025年以降も引き続き人材力・収益基盤の強化を加速することにより成長していくという方向性を変えるつもりはありません。
コロナ禍の影響により3年連続の無配となるなど、株主の皆様には大変ご心配をおかけしましたが、なんとかここまで回復し、利益も出せるようになりました。
今後も一層の事業成長により安定配当を継続することで、当社を長くご支援いただいている皆様に報いていきたいと考えております。変わらぬご支援を賜りますようお願い申し上げます。
代表取締役社長 |